新幹線に乗った時のエピソード

それまでは本を読んでいたのですが

それまでは本を読んでいたのですが、車窓の外に拡がる景色を観て、すっかり本のことなど忘れてしまいました。
それは、新幹線の窓から見える富士山の姿でした。

大学受験のために、初めて一人で北海道から東京の兄のアパートに行き、そこで都内の大学をいくつか受験しました。
その後、名古屋の大学を受けるために新幹線に乗っていたのです。

初めて見る富士山は、窓の外一杯に広がるようにしてその裾野を遠くまで伸ばしていました。
実際にどう見えたのかはともかく、記憶の中の富士山は新幹線の大きな窓が、全部富士山で染まったようでした。

車内の乗客皆が、同じように感動の声を上げて富士山に見入っていたのも印象的でした。
カメラを取り出してシャッターを切る人もたくさんいました。
30数年前のことですから、今のようにスマートフォンで写して即座に確かめて更には誰かに送るというのではなく、旅から帰って写真屋さんで現像してもらうまで、窓にフラッシュが反射して富士山が写っていないという悲劇も分からない時代です。

唯一、しょっちゅう出張などで通りかかっているらしい中年のサラリーマンだけが、興味なさそうにスポーツ新聞を読みふけっていました。
その姿を見て、大人になるとはああいうことか、とも思いました。

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